培養細胞を使って環境中化学物質の毒性をさぐる

研究室 Pick UP!! 環境衛生学研究室


”エコトキシコロジー” という研究分野

 カドミウム、有機水銀、ダイオキシン、亜硫酸ガス etc.・・・。これらは50年以上前、日本で重大な環境問題を引き起こした有害な化学物質です。現在は国や企業の対策が進み、日本の生活環境で、これらの化学物質が人体に対して影響を及ぼすレベルで検出されることはほとんどありません。一方で、私たちの周りにある化学物質の中には、まだ毒性の有無がはっきりしていないものも数多く存在します。環境中に存在する化学物質の “毒性” を評価・検出する研究分野を環境の「エコ」と毒性学の「トキシコロジー」を合わせて 「エコトキシコロジー(ecotoxicology, 環境毒性学)」 といいます。環境衛生学研究室では、培養細胞を使って環境化学物質の毒性をさぐる研究を行っています。

培養細胞の顕微鏡写真


異物を代謝する酵素がアレルギーを引き起こす?

 私たちの研究テーマの一つに 「化学物質による皮膚アレルギー発現における異物代謝酵素の寄与」 があります。異物代謝酵素とは、化学物質が体内に入り込んだ際、化学物質を代謝・解毒して体外に排出する酵素のことです。私たちは、代表的な異物代謝酵素の一つ “シトクロムP450 (通称 CYP; シップ)” に着目した研究を行っています。CYP酵素は、化学物質の解毒分解に重要な役割を担っていますが、化学物質の種類によっては、CYP が化学物質を活性化 (有毒化) してしまい、皮膚アレルギーを誘発する可能性があります。

培養細胞のプレート


 これまでの研究の結果、幾つかの環境化学物質は、ヒトの皮膚由来の細胞内に発現した複数のCYP酵素* によって活性化され、皮膚アレルギーの可能性が増加する傾向があることがわかってきました。現在は、どのCYP酵素が、どんな化合物を活性化して皮膚アレルギーを引き起こすのかを検討しています。培養細胞を使った検出方法は、動物実験を行わずに化学物質の毒性評価ができるので、医薬品や化粧品、食品などの開発などへの応用も期待されています。

学生の学会発表の様子 (第46回日本毒性学会にて)


関本 征史 准教授

環境衛生学研究室


*CYP は複数の種類があり、全生物では700種類以上、ヒトでは50種類程度の分子種が報告されています