【突撃!研究室04】鉄粉を使った地下水汚染物質クロロエチレン類の分解

 環境科学科ブログの新シリーズ「突撃!研究室」の第4回は「水環境学研究室」。卒論で忙しくなる直前の研究室にお邪魔して、環境科学科の学生さんたちの研究室での実験の様子を見せてもらいました。

 クロロエチレン類は電子部品の製造やドライクリーニングなどで広く使われている洗浄用有機溶剤です。漏出などの原因で地下水に溶け込んでしまったクロロエチレン類は鉄粉を使って取り除きますが、その過程では毒性の強い物質(低次クロロエチレン類)と毒性の弱い物質(クロロアセチレン類)が生成される2通りの経路が存在します。そこで、水環境学研究室の化学班ではクロロエチレン類の鉄粉による分解プロセスを調べ、反応生成物の毒性を抑えて安全に効率よく除去する方法を研究しています。


 水に溶解したクロロエチレン類は、ガスクロマトグラフィーという分析装置を使って調べます。クロマトグラフィーといえば、水性インクをつけたろ紙の端を水につけておくと、含まれている色素が虹のように分かれて出てきますよね。同じ原理で気体状物質を分離するのがガスクロマトグラフィーです。分解生成物を含んだサンプルを装置左上の注入口から打ち込むと、分析器の中でガス状になったサンプル中の物質は、吸着剤の詰まった細管を通るときに吸着能の大小によって流出時間に差が生じ、分離することが可能となります。細管に繋いだモニターで時間差で現れたピークの面積を測定することで、各物質の濃度が分かるのです。


 クロロエチレン類を鉄粉で分解するときの反応生成物は、反応温度が高くなると毒性の強い物質の生成量が多くなる可能性が、これまでの研究から見出されています。そこで、様々な温度に設定した恒温槽内で分解実験を行い、発生する生成物の比率を調べることで、クロロエチレン類除去の際に発生する毒性物質のリスクが、反応の温度条件でどのくらい変化するのかを調べています。地球温暖化が進んでくると、地下水汚染の除去方法にも影響が現れるかもしれないですね。


( 特任助教 坂西梓里・新田梢・髙田久美子)